コーンビームCT再構成

標準コーンビームX線CT装置(下左図)は、 各方向から撮影した複数の透視画像に対して様々な処理を行うことによって、 対象物体の3次元CT画像を得ることができます。

一般的に、CT再構成は、下右図に示したようなステップで行われます。 下右図のCT再構成の流れにおいて、 様々なフォーマットの透視画像を読む機能、 透視画像に対してのノイズ軽減機能、 CT再構成画像に対してのアーチファクト軽減機能、 膨大な計算量を必要とする逆投影過程の高速化機能、 様々な撮影システムに対しての新しいアルゴリズムの実装は、 TomoShop® の目的となっています。

標準コーンビームX線CT装置 CT再構成の流れ
標準コーンビームX線CT装置 CT再構成の流れ

TomoShop® を用いて、コーンビームCT再構成を行う場合のメリットは次の幾つかの方面にあります。

1. 高速なCT再構成

TomoShop® によるCT再構成の高速性を示すため、 標準の円軌道コーンビームCT装置で撮影した360枚の512x512画素の投影データから512x512x512画素の3次元画像をFDK[2]法でCT再構成する場合、 計算時間および実装環境を以下に示します[1]。

  • 逆投影過程の計算時間: 2.3秒

  • 重み計算+フィルタ計算+逆投影計算: 3.9秒

  • OS : Windows XP SP2

  • CPUおよびメモリ: Intel Core 2 Duo 1.86GHz, 2GiB RAM

  • GPU : GeForce 8800 GTS 512M, CUDA Version 2.0

2. 高画質の断層像

コーンビームCT装置において、投影データの元になるFPD (Flat Panel Detector) などの検出器で測定した生データの精度は、CT再構成画像の画質に影響を及ぼします。 例えば、X線強度が正確に測定されていない場合、 CT再構成画像のエッジ部分を強調し過ぎるなどの画質劣化が生じます。 TomoShop® は、下の図で示したように、 様々な劣化要因の影響を軽減する処理を組み込んでいます[1]。

生データのアーチファクト軽減

また、CT再構成アルゴリズムの選択も画質を決める重要な要因ですが、 弊社が開発したCFDK[1]法およびCUDAで高速化できるように変形したTFDK[1,3]法では、 弊社特有のフィルタを掛ける手法を用いることによって、 下の図に示したようにコーンビームアーチファクトの軽減が実現できました。

FDK TFDK CFDK

3. 様々な装置に適用可能な高汎用性

コーンビームCT装置は、利用分野や検査目的によって装置の幾何学的な設計が異なり、 それに伴ってスキャン軌道と検出器の配置が変わります。 例えば、標準のコーンビームCT装置では、FDK[2]法などを用いてCT再構成できますが、 乳がん検査用ディジタルTomosynthesis装置では、検出器の配置が違うため、 FDK[2]法をそのまま使用することはできないです。 TomoShop® では、標準な円軌道のほかに、 ヘリックス軌道・楕円軌道・多角形軌道など非標準な撮影軌道にも拡張して、 様々な撮影幾何系に対応できる汎用性の高いOmni逆投影アルゴリズムを組み込んでいます[1]。

4. 部分CT再構成

TomoShop® は、部分的に逆投影処理を行うことによって、 対象物体を部分的にCT再構成できます。 実際の非破壊検査では、対象物体の撮像範囲を全部検査する必要がなく、 撮像範囲のある部分だけを検査する必要があります。この要望に応じて、 TomoShop® では、ユーザーが検査しようとする対象物体の検査領域をパラメータで設定し、 それに応じて対象物体の検査領域を高速にCT再構成できるようにしています。

5. ズームCT再構成

TomoShop® は、ユーザーの要望に応じて対象物体を拡大(縮小)してCT再構成できます。 断層装置では、検出器の画素サイズ、X線源から回転中心までの距離、 X線源から検出器までの距離によって、対象物体の標準ボクセルサイズが決められています。 これと比較して、TomoShop® は、ユーザーが与えたボクセルサイズによって、 対象物体をCT再構成できます。

6. マルチGPUでの超高速再構成(オプション)

マルチGPU再構成

TomoShop® 3.5から、マルチGPUでのコーンビームCT再構成をサポートします。右の図に示したように、同じ型番のGPUを複数(最大16個)駆動して、 超高速にCT再構成を行うことができます。 標準の円軌道コーンビームCT装置で撮影した撮影データに関して、FDK[2]法を用いてCT再構成する場合、計算時間および実装環境は以下のようになります。

  • OS : 64ビット Windows 10 Pro

  • CPUおよびメモリ: Intel Core i7-6850K 3.60GHz, 128GiB RAM

  • GPU : デュアル GeForce GTX 1080、8GiB GDDR5X, CUDA Version 8.0

  • 撮影画像サイズ:2000×2000 ピクセル

  • 撮影画像枚数:720 枚

  • 再構成画像サイズ:2000×2000×2000 ボクセル

  • 再構成時間(Log 計算+重み計算+フィルタ計算+逆投影計算):

  •    シングルGPU ( 52秒 )、 デュアルGPU ( 30秒 )

注:マルチGPUでのCT再構成は、オプション機能ですので、別途料金がかかります。
  F エディション シリーズの場合、デュアルGPU対応は60万円(税込66万円)です。その以上はGPUごとに20万円(税込22万円)追加します。

7. 逐次近似法CT再構成(オプション)

TomoShop® 4.0から、逐次近似法CT再構成(IR)をサポートします。逐次近似法は、撮影画像にノイズが 多い場合や撮影方向数が少ない場合などに対して、事前情報などを用いることによって、 従来手法より画質の良い画像を得ることが期待されています。TomoShopでは 最新の逐次近似CT再構成(IR)手法をマルチGPUで実装し、短時間、高画質のCT画像が得られます。

注:逐次近似法CT再構成は、F3エディションとF4エディションのオプション機能ですので、別途料金200万円(税込220万円)がかかります。

[1] 李 美花、工藤博幸, CUDAによるコーンビームCT画像再構成の高速化とツールキット開発 ,
  映像情報メディカル, Vol. 40, No. 13, pp. 1194-1198, 2008年12月.

[2] L.A. Feldkamp, L.C. Davis and J.W. Kress, Practical Cone-Beam Algorithm ,
  J. Opt. Doc. Am. A 1, pp. 612-619, 1984.

[3] M. Grass, T. Koehler and R. Proksa,  3D Cone-Beam CT Reconstruction for Circular Trajectories ,
  Phys. Med. Biol. Vol. 45, No. 2, pp. 329-347, 2000.