レントゲン技術(X線)は、発見してから100年の間、やわらかい組織が写せないという難関がありました。
東北大学の百生敦教授は、この難関を突破して、
乳がんや軟骨などをはっきり撮影することに成功しました。
その解像度は非常に高く、医療応用のほかに、非破壊検査などへの応用も期待されています。
1. 原理
X線の複素屈折率は、一般的に のように表示します。
ここで 、 はX線の振幅減衰(吸収にあたる)、
はX線の位相シフトを表します。
硬X線領域では、X線の位相シフトが振幅の減衰より大きくなります(特に弱吸収物体に対しては1000倍ぐらいもなります)。
そのため, 軽元素からなる物体に対しては位相シフトを利用して高感度のイメージングを得ることができます。
弊社の位相技術は、以下のようなTalbot自己像効果を利用した実験環境に適用できます。
|
図 1 Talbot自己像効果を利用したの位相イメージングシステムの構成
|
P.S.
回折格子がTalbot自己像効果できる位相格子の場合、実験室用のX線源でも位相画像が得られるため、実用性が高いです。
2. 弊社の位相技術の特徴
弊社は、百生敦教授たちの理論に基つき、実用化を目指して、
撮影回数を数十回から数回に減らしても、画質が変わらないアルゴリズムの研究と開発を行っています。
利点として、X線の被ばく量は減少、機械操作の精度への要求が低下・コストダウンなどが挙げられます。
- 撮影回数が何十回から四回になれます。そのため、X線の被ばく量が大幅に減少します。
- 回折格子を移動する間隔が何倍ぐらい大きくなります。そのため、操作が簡単になります。
- 高精度で計算を行うため、位相CTでCT再構成を行う場合、アーチファクトが低くなります。
3. シミュレーション
図1のように、検出器から回折格子までの距離は、自己像を形成するためにTalbot距離で固定しています。
回折格子の周期をN等分し、移動距離を決めます。その後、移動距離で回折格子を横方向へ移動し、撮影を行います。
図2に位相サンプルを表示し、図3にシミュレーションの一枚画像を示します。
|
|
図 2 サンプル |
図 3 シミュレーション画像 |
4. シミュレーション結果
撮影したN枚の画像を処理して、サンプルの位相差像を復元することができます。
図4と図5は、4ステップ(N = 4)の4 枚の撮影画像を利用して復元した位相差画像です。
|
|
図 4 従来の差分画像から得た位相差像 |
図 5 弊社の技術で改良した位相差像 |
4. 実データの結果
実データの撮影画像は、東北大学の百生先生、矢代先生から頂きました。
詳細は下記の論文[1]を参照してください。
|
図 6 従来手法で得られた位相差分画像と位相差像 |
|
図 7 弊社手法で得られた位相差分画像と位相差像 |
[1] Lian S, Yang H, Kudo H, Momose A, Yashiro W,
An improved phase shift reconstruction algorithm of fringe scanning technique for X-ray microscopy
,
Review of Scientific Instruments 86, 023707 (2015).
[2] Momose A, Takeda T, Itai Y and Hirano K,
Phase−contrast X−ray computed tomography for observing biological soft tissues,
,
Nature Medicine 2, 473—475, 1996.
[3] Yashiro W, Harasse S, Takeuchi A, Suzuki A, Momose A,
Hard-x-ray phase-imaging microscopy using the self-imaging phenomenon of a transmission grating
,
Physical Review A, vol. 82, Issue 4, 2010.